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「ご先祖様ですが、何か」


 第1章 神様の遣い参上!

ここは北関東の栃木県の最南端にある小さな町。これといって有名な特産物も歴史遺産などもない。一般的な場所と

しかいいようがない所である。

桜の花が散り、季節は5月。毎年、日本人がこぞって出かける連休がくる。昭和の時代のニュースではゲルマン民族

大移動みたいな表現で比喩したような記憶がある。

ここにごく平凡な若者がいた。

「ま、金もなければ彼女もいない。ましてや、旅行には興味がない。

毎日、コンビニバイトある。」

泣き言だけがバイトの勲章、中里剛『なかざとたけし』24才。

なんとか三流大学は出たが就職でつまずき、学生時代からバイトしていたコンビニが彼の就職先。時給だから生活は

カツカツで朝飯は抜き、昼はコンビニでワンコインのカップ麺、運が良ければ期限の切れた弁当やお握りを店長が内

緒でくれる。ま、店てきには廃棄処分しないとならない決まりだか店長はケーキの期限切れは決まって自分が処分す

ると言っては持ち帰る。そんな光景を何度も観たが自分は甘いものは興味がない。

 

店長は最近結婚した。店長と言っても給与も安く生活も厳しいようで口を開けば家賃やら車のローンだとか愚痴を聞

かされる。

ケーキは甘党好きの奥さんの機嫌取りの餌か?

そして店長は私の口封じのため何か、はたまたバイトへの親切心か、期限切れの弁当をくれる。決まって「オーナー

には内緒な!」と耳元でつぶやく。

ま、腹も満ちるし、いまでは当たり前のようにもらっている。習慣は恐ろしい。

全く、罪悪感はない。

こうやって悪事に加担していくのか?

それより、期限時間が過ぎてすぐに腐る訳ではないし、廃棄処分はもったいない処分費用も掛かる。

むしろ自分は進んで環境活動をしている自負を持ち、期限切れの弁当やお握り処分をする。まさに良いことをしてい

る自分に誇りを感じる気持ちすらある。

 

ま、いくつか受けた企業面接で学生時代の社会貢献でこの話をしたが受けがあまり良くなかった。やはり盗人なのか。

いまだに企業の採用基準がわからない。

いずれ、それなりの会社が見つかると思いながら2年が過ぎた。

すっかりコンビニ社員も板に付き、平凡な毎日、ま、時折、クレーマーが来るがそれも給与のうち。今では慣れたもの

で対応できる。ま、そいつらが帰る背中に向けて「ばーか、いつかぶちのめしてやるからな!覚えておけよ」と心の中

でつぶやく。所詮、チキンな性格である。

 

ある朝の事だった。

剛はコンビニバイトが休みなので11時過ぎるのに布団にいた。

『おーい、たけし。いつまでも寝てねえで、こら起きろ』

うとうとしながら剛は思った。栃木弁で話す奴って誰?

起き上がり回りをみるが、誰もいない。なーんだ気のせいかと思い、また、横になる。

『剛、いいかげんにせんとしばくぞ、こら。

明らかに関西弁だ。

剛は起き上がり『悪夢だ、期限切れ弁当が当たったか?』と言ってまた床につく。

『悪夢でも夢でもねぇ、げんずつだ。

聞いた事がねえ、方言だ。いったい何が起きている。剛は回りをよーく見回した。

枕元に良くできた蛙の置物があった。

『置物じゃねえし』 

『置物がしゃべったー。』

漫画や映画なのか、蛙が話す訳がない。と剛は思った。

『剛、いいかげんに気付けよ。』

 蛙は足を組み、あきれた顔で剛を見る。

剛は聞いた。

『お前、着物着ているが蛙だよな?

 蛙は言った『じゃ、何に見えるんだ?

サラブレッドやチーターには見えないだろう。』

 剛は言った。『また、ドッキリカメラ?

蛙は呆れ顔で舌打ちした。

そして言った。

『私は神様から遣いできた。』と言って蛙は着物の懐から巻物を取りだし読み上げた。

 「えー、剛に告ぐ。これから重要な話をするので真剣に聞くように。

私はお前の御先祖様だ。名前は匿名希望で今は言えない。のっぴきならない事情があり、お前に頼みたいことがある。」

と言って蛙は淡々と読み上げた。

「渡良瀬遊水地のハート型の上の所に旧谷中村があった。

いまでもその場所はあるだろう。【グーグルアースで確認済みだ】その村の中央には小高い丘がある。その丘には昔、

雷電神社という谷中村民が崇敬した社があった。現在は「旧:雷電神社跡」の墓標のようなものがあり、その隣に大き

な石がある
その石の周囲小さな瀬戸で出来た5cm位の狐の置物が埋まっているのでこれを探しだし、古河市にあるに

雷電稲荷神社に奉納してくれ」
との内容の伝言だ。

蛙は言った。何か質問はあるか?

「今でもそんな場所はあるのか?」

「お前、聞いてなかったのか?、グーグルアースで神様が確認済みって言っていただろう。」

「神様もパソコンを見るのか?」

「便利だからな。特にグーグルはお気に入りのようだ。」

「わかっているんだったら神様が取りに行けばいいのに」

「それができないから子孫のお前に頼んでいるんだ。そこにはふかーい訳があるのだ」

「どんな、訳があるんだ?」

「それが今は言えない。だからお前に頼むんじゃないか」

「その旧雷電神社跡の隣にある石の下に狐の置物がなかったら?

 蛙は間髪入れずに言った。

「ある 

「他の質問は?

 「ないな、ぐだぐた言わないでやれ。確かに伝えたぞ」

 

剛は言った

「だいたい、やるかやらないか返事も俺は言ってないんだけどなー。

 蛙は言った。

「神さまからの命令に逆らうのか、お前、大変な事になるぞ!それでもいいのか。」

「いや、やらないとは言ってない。

 「じゃ、頼んだぞ」

「だからやるとも言ってない。

 

蛙は切れた。

「おまえ、ええかげんにしとけや。お前を石の下に埋めるぞ、こら。

「ただの蛙じゃねえから。舐めんなよ」

蛙の凄みは凄かった。 

蛙は言った

「蛙の前世は人間だった。結構、あぶない橋を渡って仕事していたことを語った。 

「お前が何を考えてるか、手に取るように分かるんだよ。

「じゃ、いちいち聞かなくてもいいじゃないか。

とふて腐れ顔で剛が言った。 

「お前が自ら動くことがミッションなんだ。と神様が言っていた。」

 蛙は嘆願した。

「俺もお前に動いてもらえないと今度は何に変えられるか?」

 「それでなくてもカエルにされた事でショックは大きいのに更に違うものに変えるって

 神様に言われている。頼みます。剛様、あなたが頼りなんです。」

剛は言った「神様だからって何でも言うこと聞かないとならないのかー」

蛙は諭すように大声で言った。

「じゃー、お前は王さまゲームで負けても王さまの言う事をきかないのか? 

「それは王さまの言われるままにやると思う。

「神様の言う事はぜったーい

「王さまゲームみたいに言うなよ。」

 「似たようなものだよ」と蛙は言った。

剛もなんとなく、うなづいた。

しばらく考えて剛は言った。

「わかった。俺のご先祖だし、訳ありで困っているのだから神様の言う通りやるよ。

でも、疑い深い剛は思った。蛙の言う事は本当に神さまからの命令なのかと思った?

蛙は言った。

「おまえ。いま、神様からの命令か、疑っただろう。人の心が読めるなんて神様しかいないんだよ。

剛は言った。「俺にはどんなメリットがあるんだ?」

 蛙は言った。「それは神様からのありがたい命令に応えることができる。ま、名誉だよ」

剛は思った。 

「え、だってそれを語る。お前は蛙じゃん」

「お前な、俺はただのカエルではない。神様の代理で一時的に神通力をもらったから話せるし、人の心がわかるんだよ

。だから元をただせば神さまからの力。

で「何を探せって。花瓶とか土瓶とか?瀬戸物のガラか?」

蛙は言った。 

「お前、今のはわざとだろう」

剛は感心した。「すげえ、心が読まれている。

「それでいつ、やるんだ。夏までにやればいいのか?」

蛙は言った。

「いや、今日中にはやらないとダメだと言っていた。」

「内緒だが、できなければ、剛を狐の置物に変えて奉納しろと神様は言っていた」

「内緒って」 

そうこうしているうちに昼になる。蛙が言った。 

「おい、剛。昼はご馳走しろよ。俺はペヤングのインスタントのやきそばが食べたい。安いもんだろ。」

剛は言った。

「蛙がやきそば食うのか?」

「お前な、今は蛙だけで前世は人間だったの」

「わかった。ペヤングやきそば買ってくる」

「UFOやきそばじゃだめか?ぺヤングは虫が入ってて販売中止になったんだぞ」

「インスタント焼きそばの定番は ペヤングだろう。また、油で揚げた虫が深い味を出す調味料のようなものだよ。」

「はい、はい。買ってくるよ」

そう言って剛はコンビニに買い物に出かけて帰ってきた。 

そそくさとインスタントやきそばを作った。蛙は所詮、やきそばを3本も食べればお腹一杯になったようで

残りは剛が食べた。
 

「よし、剛。いくぞ!」

剛は言った。 

「え、蛙も行くのか?」 

「お前、蛙・蛙って呼び捨てにするな。こうみえても神様の使い。」 

「じゃ、なんて言えば?」 

「そうだな、ケロちゃんさん と呼べ」

「え、ケロちゃんさん。か? 」

「ケロちゃん。でよくねぇ。」

「神様はモラルハラスメントにきびしいんだ。下界と同じように神様の世界も階層が複雑なので今はどの階層の神様も「○○さん」

と呼ばなくてはいけないんだ。

「上の世界もパワハラとかモラハラとかあるのか、人間社会の面倒な世相は変わらねんだ」

ケロちゃんさんは言った。

「それはそうだよ。現世で生きた奴らが上がってくるんだから、意識が変わるわけでもない。」

剛は言った。

「え、少なくても魂は死ぬと浄化されて欲や悪いことなど無くなって綺麗になるイメージがあるけど・・・。」

「甘いな。所詮、魂はそのまま何も変わらずに上がってくる。

酒が好きな奴は同じように酒浸り、博打の好きな奴は毎日、ばくち三昧。

女が好きな奴は相変わらず、女を追っかけ回してる。 

神様になっても名前だけが神様で欲望や性格などの意識は何も変わらない。」

剛は言った。

「もう、それ以上言うな。あの世のイメージが壊れる。」

「ま、期待しないことだな。お花畑があり、そこを超えると楽園。そう思っていた頃がなつかしいぜ!」と

ケロちゃんさんが窓の外を見ながらさみしげに言った。

剛は言った。

「何言ったんだか、全くわからねぇ」

ケロちゃんさんは顔面から前のめりにビタつかった。

剛は言った。

「よしものとギャグか」

いよいよ、剛とケロちゃんさんは自転車に飛び乗り、旧谷中村を目指した。


第2章 旧谷中村はいずこ

渡良瀬遊水池はこの近辺に住んでいる者であれば誰でも知っていた。

小学校の遠足や花火大会など
行う場所で地元では有名な場所でもある。

遊水池について剛はバッグからスマホを取り出し、Google Earthで旧谷中村を調べ始めた。

「小学校の遠足でここに来た記憶はあるが何分、10年以上経っていれば正確な場所はよくわからない。

スマホに映し出された地図を頼りに旧谷中村に向けて再び走り出した。 

「おい、剛。」

「ケロちゃんさん、何か?」

「お前は旧谷中村の歴史、知ってるか?」

「んー、子供の頃に聞いたのは遊水池を作るのに旧谷中村の人が引っ越した。話だろ。

ケロちゃんさんは聞いた。

「そうそう、引越し金額でもめて、反対運動にな。」ってそんな話じゃないんだ。

「よーく聞け話してやるから。」

剛は言った。

「それは、今まで住んでいた故郷が渡良瀬遊水池になってしまうと言えばそれは思い出がなくなるよう

なもので反対はするんじゃないか。」

「お前は地元なのに何も知らない馬鹿か?」

ケロちゃんさんは剛の肩に乗り、耳元で語りだした。

「旧谷中村はな、足尾鉱毒事件により地図から抹殺された悲劇の村と呼ばれている。

明治10年、剛が生まれる100年以上前に足尾銅山から排出された鉱毒
により洪水の度に渡良瀬川の流域の

村々は、作物が枯れたり、渡良瀬川の豊富な
魚介類が死滅する大きな被害が出ていた。

これが日本で起きた公害の始まりだと
も言われている。

明治33年には被害民が大規模な抗議行動を起こして社会の
耳目を集めて当時の国会でも大きな問題に

なったんだ。
 

時の明治政府は鉱毒解決の為、毒の水を貯める調整池として今の渡良瀬遊水池の建設を計画したんだな。

ま、足尾銅山は江戸時代に幕府直営の銅山として年間最
高で1500トンを記録、1800年代には廃坑

同然になったのだが長い歴史の
中で地図から抹消されてしまった村なんだよ。」 

剛は黙って聞いていたが、重い表情で言った。

「そんな歴史があったのか。話を聞くまでは全く知らなかった。」

更にケロちゃんさんは語った。

「足尾銅山鉱毒事件の時に、栃木県当局の谷中村強制買収反対運動に生命を賭けて戦った田中正造翁も

この神社をこよなく敬愛し、この社殿で村民青壮年と共に寝食を
忘れて談じ、ある時は難戦苦闘する村民を

慰め激励したところでもあるのがこの雷電
神社なんだ。

ここには谷中村民の戦った証だな。」



「ケロちゃんさんはよく知ってるなー。神様の受け売りか?」

「剛、お前な。俺は昔々、前世ではここで最後まで戦った谷中村民に友達がいてな。

その友達がよく話してくれたんだよ。だから、ここの事なら何でもわかる。」 

「だったらGoogle Earthで調べている時にこっちだと教えてくれればいいじゃないか」

「ま、確かにそうなんだが、蛙になっていざ、景色を見ても村があった頃とは違っていて

方角すらわからない。やっぱ、蛙だよ。ケロケロ!」

「まったく、ケロちゃんさんは都合悪いと蛙になるのか?」

「やはり蛙が人間の話をするには身体に負荷がかかる。ずっと長くは持たないんだ。

時折、疲労回復が必要な身体なんだよ。ケロケロ」

肩まであるヨシの林を抜けていくと、旧谷中村の看板が見えた。

「いやー、古そうな看板だなー」 

「そこを進むと延命橋ってのがあるはずだ」とケロちゃんさんが言った。

「あ、橋のたもとに延命橋と書いてある。」

この橋を渡れば旧谷中村だ。そこから100m位で旧雷電神社がある筈だ。

あたりを見回しながらケロちゃんさんが言った。

「剛、小高い丘があるはずだ。そこが旧雷電神社跡だと思う。」

「ここだ、旧雷電神社跡 と書いてある。」

「剛、問題はこれからだ。旧雷電神社跡との木中の右側に大きな石がある。

その周りを掘ってみろよ。そしてインカ帝国の金銀財宝を探すんだ!」

「ケロちゃんさんは時々、壊れる。そんなものがここにある訳がないだろう。

せいぜい、茶碗のかけ
らか、水瓶のかけらとか。

「あ、花咲爺の物語だろうそれは。隣のおじいさんにポチが殺されるって話だ。かわいそうなポチ」
 

「物知り蛙め、黙っていろよ」 

 沈黙の時間が流れた。

「ケロちゃんさんに聞きたいんだけど、ずっと気になっているんだけどそのヘッドホンは

何を聴いてるんだ。

「なんでだ。いいじゃ、ねえか。」

ケロちゃんさんは ばつが悪そうな表情で言った

「勉強だよ」

「はあ、蛙が何の勉強をするって言うんだよ。泳ぎ方の勉強か?」

 ケロちゃんさんは「むっ」とした顔で、ま、表情変化は蛙だからあまりわからないが・・・

「ちょっと前からスピードラーニングという英語の教材を買ってな。それを毎日聞いて勉強しているんだ。」 

「え、スピードラーニングって聞くだけの英会話教材だろ?」

「そうですが、何か?下界でも石川なんとかって言うプロゴルファーのCM」。

「あの世にも通販とかあるのか?」

「あるよ。あの世でもスキルを上げていかないと次に進めない」

「次って?」 

「たとえば、今度新しく命をもらったとしてだ、俺たちはこれを再生と言うが、英語ができれば

英語圏の人として返り咲きができるんだ。ただしUOIECで最低650点は取らねえとな。」

「UOIECって言うのはこちらではTOIECって読んでる英語の試験だろ?」

「そうだ、ほとんど同じものだ」

でも簡単じゃねえ、神様から英語の問題が出てそれを回答出来て 晴れて英語圏の外人になれるんだよ」

その神様が茨城なまりで質問だ。方言がきつくてわからねぇ。んだ。んだ。」

「その為には語学が必要だなんて天国いっても自己啓発か?めんどくせいなー、俺は日本人でいいや。」 

「まーな。死んでも甘くねえよ。過去と同じ国の生まれに再生されるにはポイントが必要で簡単じゃねんだ。

ま、おいおい、説明をするが」

「ポイント?だ。現代よりめんどくせい世界だな。」

「ま、カードのポイントのようなものでだな。この点数を稼ぐのが日々の活動で生活の一部のようなものだ。」

「ま、仕方がねえ、そういう仕組みだ。そんな訳でだ。いま、勉強するか、死んでから勉強するかだ?」

「コマーシャルで予備校の講師が行ってるだろう。いつ、やるの? 今でしょう」

「そんなCMまで知っているってただの蛙にしておくにはもったいねーな」

「おーい、蛙じゃねえ、ケロちゃんさんと呼べって言ってるだろう。」

剛たちは旧雷電神社跡との木中の右側に大きな石がある。その周りを 

掘りだして小一時間が経った。 

剛が掘るシャベルの先端が「カチン」と硬い物に当たった。 

「また、茶碗の破片か?」

 何しろ、もう、何十回も同じことを繰り返している。 

 シャベルが当たった場所を手で探った。何か、形のある手応えを 

感じた。「いよいよか、」剛は叫んだ。 

手に握った塊の土を少しづつ払っていく。

べっ甲色が見えた。すべての土を払うと長さは5cm直径は3cmの 勾玉の形をしたものだった。

持参したミネラルウォーターの水を掛けて汚れを綺麗に落とし、タオルで拭き取る。 

中から輝くようなべっ甲色した勾玉の中には小さな狐が台座のようなものに 座っている。

 「これが探していたものか?」

 ケロちゃんさんは言った。「やったな、剛。間違いないこれだよ。」

中をよく見ると小さな狐の表情は凛としてまるで生きているような表情でこちらをみている。

その眼光は鋭い視線で目を合わすのも怖い
 位の眼力である。そそくさとタオルに包む。 

「剛、じゃ、次にいくぞ」 

「古河にある雷電神社だな。そこでこの勾玉を奉納するとどうなんだ。?」

 
「簡単に言えばそう、解凍だな。」

「冷凍食品のようだな。」

そして剛とケロちゃんさんは古河にある雷電神社に向かった。

剛は言った。「ケロちゃんさん、疲れたから雷電神社に行く途中にサトウヨーカ堂があるので休憩して行こうぜ」

「わかった。俺も疲れたから寄ってくれ」

そしてサトウヨーカ堂に到着して1階のコーヒーショップで休息をとる。一人と一匹。


第3章 雷電様登場


しばし休息をとった一人と一匹は雷電神社に向かった。

雷電神社に着く頃はすっかり薄暗くなっていた。

ケロちゃんさんが言った。

「剛、雷電神社の境内を抜けて本殿まで行ってくれ。」

「本殿ってお賽銭あげるとこだろう。ここは子供の頃から遊んでいる場所だからよく知っている」

本殿の前に着くとケロちゃんさんが言った。「先ほどの狐の勾玉を本殿の賽銭箱の前に置いてくれ」

そう言うとケロちゃんさんは懐から巻物を取り出し、広げたかと思うとなんだか、ブツブツとお題目を唱えはじまった。

どれくらい時間が経過しただろうか、先程まで雲一つない青空だったはずなのに真っ黒な雲が神社の上にたなびいている。

何が起きるんだ・・・と剛が思った瞬間。

空が一瞬、光、上空より本殿の勾玉に向かって閃光が走る。一瞬何も見えない位に本殿の前が光り輝く。

「誰、私のことを呼ぶのは!」 少々、オネエ声が聞こえ、その主が目の前に現れる。

「もう、髪もまとまってないのよ、シャンプー変えたらダメねぇーもう、こんなんで呼ぶんだから 勘弁してよ」と

言って現れたのはまるで「尾林ママ?」と思うくらい似た人物が現れた。

ケロちゃんさんは言った「しばらく、ぶりぶり。雷電様」

雷電様は言った。「あーら、可愛いカエルさん」

剛はにやっと笑った。 おねえ系で雷電様?まー名前と人物のギャップはすげえな。

雷電様ってどう考えても虎柄のパンツ履いた雷様の鬼だけどな。

ケロちゃんさんは言った。「剛、お前が今、何を思ったのか。心が読めたんだけど。」

剛は思った。やばい、そうだったケロちゃんさんは心を読めるんだった。あちゃー。

すぐさま、雷電様が言った。「もうー、失礼な若者なんだから。確かにおねえ系は否定しない。

ニューハーフの雷電さまで何か、いけない?虎柄のパンツ。今時、そんなものが似合いのは

うる星やつらのラムちゃん位よ」

剛は言った。「すいません、失礼しました。何もおかしくないです・・・」

雷電様が言った。「ところで、私を読んだと言うことは勾玉が見つかったのね?」

ケロちゃんさんは言った。「どうしてその事を知っているのですか」

「それは神様からメールが来てたからね。話は既にわかっているのよ。」

「では早速、勾玉を解凍して中から狐を出しましょうね」

そう言って雷電様は空にめがけて手を広げると一瞬で機械のようなものを出した。

剛は言った。「それって電子レンジですか?」

雷電様は言った「んー下界ではそうね。電子レンジかもね。でもこれは違うのよ。雷電レンジって言う

特別な機械なのよ」

剛は思った。「いや、機械の正面の下に銀色に光った「ZONY」とロゴがある。間違いなく、電子レンジだよ」

雷電様は言った「外側はそうかも知れない。中身が違うの?」

そう言って雷電様は雷電レンジの扉を開けて勾玉を入れると右側にあるダイヤルを回し、スタートボタンを

押した。すると扉のガラス面より内側の部屋に照明がついたように見えた。そして勾玉を乗せた丸いお盆の

ようなものがゆっくりと回転している。

剛は思った。「やはり、電子レンジじゃねえか・・・」

ケロちゃんさんと雷電様は同時に言った。「だから雷電レンジ!」

剛は思った。「はい・はい」

しばらく雷電レンジを見ていると中から真っ白い煙が立ち上り、雷電レンジも見えない位になった。

「ちーん」と明らかに雷電レンジと読んでいる機械の方からの音だ。

しばらくすると煙が流され、中から人と同じ位のシルエット。

煙が流され、中から着物を着た美女が現れた。年齢的には10代後半から20代前半位だろうか・

しかし、よく見ると頭の横に犬のような耳がついている。頭には狐のキャラクター風のカンザシ?。

剛は思った。「誰だ。狐か?」

ケロちゃんさんと雷電様は謎の美女に頭を下げた。

雷電様は言った。「大変、お待たせして申し訳けありませんでした。こうして姫様にお会いできるなんて夢のようでございます。」

謎の姫が言った。「雷電ジィ、しばらくだった。以前会ったのはいつだ。そう、180年前だな?」

雷電様は言った。「あら、どうして180年前だなんて姫はわかったのですか?」

謎の姫は言った。「だってこの雷電神社の入口にある欅の木はわらわが子供の時に父が植樹したのを覚えておる」

雷電様は言った「まぁ、姫はそんな事まで覚えていたなんて、すごいわー。今は180年経ってあんな大きな古木に

なりました。」

謎の姫は言った。「ところでそこの若造と汚れたカエルはなんだ?」

雷電様が言った。「姫様をお救いした者たちです。」

謎の姫は言った。「ご苦労だった。感謝する。私は今から180年前にいたずらが過ぎてな。勾玉に閉じ込められて

しまった。今から180年前より旧谷中村には人間だけでなく、狐族が住んでいた村があったのだ。私の父は狐族の長老

で私が娘のMayJ。みんなは「MayJ 姫」と呼んでいた。

剛は思った。「メイジェィ」って何か、「♫♫ありのーままの姿見せるのよー♫♫」、あの歌手と同じ名前?と心で言った。

黙っていたケロちゃんさんが言った。「剛、姫もお前の心が読める・・・ようだ」

剛はみんなから目をそらした。

MayJ姫は剛の前に来てにらむように言った。「そうよ。同じ名前で文句あるのかな?」

剛は姫を見ながら言った。「いえ、問題ありません。すいませんでした」と言いつつ、心で叫んだ。

「誰のお陰でこうして出られたんだ。はぁ!」

姫は言った「剛、お前は馬鹿なのか?学習能力ないのか?」

「確かに剛、お前のお陰でこうして出てきました。でもな、これは180年前から今日の事がわかっていた。

そう言っても信じてもらえないかも知れない。そこでだ。」

May J姫は 雷電神社の境内の入口まで行き、剛を呼んだ。

そして剛を鳥居の所に立たせた。

May J 姫は言った。「剛が信じてくれないのもわかっていたので、180年前にわかっていたことを証明してみせる。」

「3秒数えると、剛が消えます。 はい、ワン、ツー、スリー」

そう姫は言うと剛から離れた。

すると轟音と共に風が砂塵や枯葉を舞っている。次の瞬間、上のほうから大量のまつぼっくりが剛めがけて落ちてきた。

粉塵が収まると剛がいない。

鳥居の下には山と積もった まつぼっくりがある。その山から手が見えた。


次の瞬間、剛がまつぼっくりの山を崩し、出てきた。

May J 姫は笑いながら言った。「ほら、剛。わらわの言うとおりだろ。このまつぼっくりは180年前に集めてカゴに詰め

鳥居の上にセットしたんだ。簡単に言えばリモコンタイマーだな。昔、セットしたものを時空を超えて操作ができる。

そういうことだ。 それより剛に頼みがある。お腹すいたから何か食べるものないのか?」

「さっき、サトウヨーカ堂に寄ったんだから何か、買ってきてくれればいいんだよ。気が利かないやつらだ。」

姫は更に続けた。

「おい、剛。わらわの為に何か、買ってこい。ありがたいご命令だ。心して受けろ。」

剛は思った。「えー、マジ!。命の恩人にわがままな姫」。しかし、すぐに取り消した。「今のは間違いです。麗しい姫の為に

何でもします。家来です。」と心で言った。

姫が言った。「剛は今日から わらわの家来に任ずる。」

剛は心から言った「ありがたき幸せでございます。」そう言いながら涙ぐんでいた。

それを雷電様とケロちゃんさんは冷ややかな表情で見ていた。あたりは夕暮れから夜のとばりに入ろうとしていた。



剛は思った。いや、狐だし、次元を超えたリモコン操作や先が読めるのでは勝てない。ま、勝ち負けの話ではないか。

剛は言った。「May J姫に申し上げます。何かを買ってくるのはうれしき幸せなことですが、既に辺は暗くなっており、

どうでしょう、この先に美味い蕎麦屋がありますのでそちらでディナーなどいかがでしょう?」

May J 姫は言った。「剛、名案じゃなー。では蕎麦屋でディナーとするか」

そうして一行は剛の案内する蕎麦屋に着いた。

May J 姫は言った。「ここが蕎麦屋か。で何が名物なのか?」

「剛、お前わらわが狐だから油揚げをのせた麺類くらいのイメージで考えてないか?」

剛は言った。「姫は油揚げはお嫌いですか?」

May J 姫は言った。「正直、嫌い。狐には油揚げを用意すれま満足すると思っていませんかねー?

昔は今のように選べる時代でもましてやお供えするのに高価なものは皆が出せるものでもない。

そこで安価で買えて庶民も口にできるもの。それでご先祖が油あげを所望したと聞いている。

ま、そういわけでわらわが食べたいのはマックだ」

剛は思った。「やばい、図星だ」。「そうか、先々のことはわかるって言っていた。正直、何が食べたいのか、既に

見えているんだろうな。」

姫は言った。「剛、マックにいくぞ!マックでバーガーはアボカドベジタブルチキンにポテトのLだ。それにマックフィズの

グリーンアップルを頼みたい。」

剛は言った。「ではマックにご案内します。でも姫はなぜマックをご存知ですか?」

May J 姫は言った。「勾玉に閉じ込められたとき父がパソコンを一緒に持たしてくれてな、それで色々な情報をみていた。

剛は言った。「それでメニューもご存知でしたか。」

May J 姫は「剛、ごちゃごちゃ言わないでいくぞ。」そう言うと剛が乗ってきた自転車の後ろに座った。

剛が言った。「May J 姫、申し訳ありませんが自転車は二人乗り禁止なんです。」

May J 姫は言った「では二人乗らなければいいのだろう。わらわは疲れた。歩けない。」

剛は自転車のハンドルを握ると自転車を転がしはじめた。いつのまにかケロちゃんさんは姫の肩に座っている。

May J 姫は言った。「剛、気持ちいいのう。自転車とは便利なものだな。」



そうこうしている内にマックに到着。そしてMay J 姫が頼んだメニューに他のメンバーも合わせた。

注文を終え、品物をトレーで運び席についた。

姫は言った。「剛、知ってるか?。このアボカドベジタブルチキン バーガーは今月からの新商品だ。」

剛は言った。「お詳しいですね。で、バーガーの味はいかがですか?」


May J 姫は言った「美味じゃ。アボガドとチキンが口の中で踊っておる。いい時代じゃ、わらわはこの時代が好きじゃのう。」

剛は言った。「姫はパソコンでグルメ番組もご覧になるんですか?」

姫は言った。「もちろんだ。地デジも見えるのでほとんどのテレビ番組もみた。特に最近のグルメ番組もわかる。」

剛は言った。「でも姫、地デジが始まったのは2009年7月からで姫が閉じ込められた180年前にはパソコンもない

時代、どうしてパソコンがあったのですか?」

May J 姫は言った「良いところに気がついたのう。確かに180年前には無かった。そこでだ父は未来の機械だと言って

いた。父は未来に行き、パソコンとやらを持ち帰り、未来の時代の情報を見られるようにしてくれた。特に勾玉の中は

違う次元なのでどの時代の情報もみることができるんだ。」そう言うと姫はグリーンアップルを美味しそうに飲んだ。



剛は言った「姫、お願いがあります。その機械で私の未来をみて頂けないでしょうか?」

黙っていた雷電様も言った。「姫、剛のことだけでなく、私のこと、特にどんな異性が現れるのかも見て欲しいな?」

May J 姫は言った「それはできん。この機械で見る為の決まりのようなものがあってな。如何なる状況であっても人の人生に

影響するような事は言えん。そういう取り決めなのじゃ。人間は欲深いからそういうことが解かれば打算的に行動して

自ら滅びる。そう父が言っておった。だから、だめー!!」


剛と雷電様は残念そうに黙ってうなずいた。


May J 姫は言った「食事も済んだし、剛、屋敷に案内せよ。わらわは疲れて眠くなった。」

剛はまた、自転車に姫を乗せると自宅に向かった。姫は自転車の後ろでうとうとしていた。

自宅に着くと姫が言った。「ここは剛の屋敷か、長屋か?」

剛は言った。「昔で言えば長屋のようなものです。狭い家ですがお上がりください。」

「え、雷電様も我が家にお泊りになるんですか?」

雷電様は言った「だって姫だけでは狼に食べられてしまうかもしれないからねー」

剛は言った。「ま、どうぞ」

姫は勝手に剛のベットに入ると早々に寝てしまった。

雷電様は言った。「全ては明日だな」

剛は言った。「え、姫が勾玉から出た段階で私の役割は終わったのでは。」

黙っていたケロちゃんさんが口を開いた。「剛、お前 May J 姫に家来の約束をしただろう。その約束は

姫が家来の命令を解かない限り、永遠に契約したようなものなんだよ。たとえ口約束でもな。」

剛は言った。「では明日からわがままMay J 姫の家来が続くってことかー、うそだろう。」

剛は部屋の隅で壁の方に向いて横になる。

これから何が起きるのか。何をさせられるのか。退屈な毎日が変わるのも面白い。剛は楽観的な性格の

せいか、バイトも休みだしな。明日起きる事が楽しみでもありワクワクしていた。

剛は思った「明日、目が覚めたら夢だったってことはないよな。少々、不安になりながら後ろを向きと

剛のベットには姫が寝ており、その脇には雷電様があぐらをかいたまま、寝ている。いつのまに。

あ、ケロちゃんさんは・・・とベットの上の棚に目をやると棚にある人形の隣でぬいぐるみを抱いて寝ていた。

おっさん蛙なのに気持ち悪。

ま、こんなに細かい夢もないだろう。なにげなくポケットに手をやるとなぜか、まつぼっくりがひとつ。

やはり、現実だ。苦笑いをしながら剛も眠りについた。




「つづく」